株式会社タスク・フォース > 会社案内 > 創業者コラム

待機児童対策としての認可保育園拡大策に思うこと

2009.09.29

景気の低迷で、お仕事をするお母様方が増え、その結果待機児童が増えている・・・と、新聞で報告され、自治体は、これまで通りに‘認可保育園を拡充し、定員枠を増やしていく’、という計画のようです。景気悪化以前から認可保育園の定員枠拡大策は行われてきましたが、本当にこの認可保育園の定員枠拡大策で、子育て層への就労者支援策になるのでしょうか?

私たち認可外保育園を運営している立場からすると、少し違う意見とならざるを得ません。小泉政権で‘待機児童ゼロ作戦’が推進し、認可保育園の定員緩和策と増床策などで定員数は拡大されましたが、現実的には待機児童が未だに2万5,000人余り存在します。一時期は4万数千人以上居た訳ですが、もともとこれは、待機児童の集計定義を変更した結果であって、現実的な待機児童は変わっていないと言えます。ただ、現状は全国の保育児童数が、204万人以上となり、少なからず成果をあげているように見えます。実態としての現象は、もともと待機児童でなかった人、言い換えれば、預け入れ条件自体を緩和した事によって、本当に保育園を必要としている人ではなく、特段預ける必要のない人までもが認可園を利用しているという現実があります。勿論、預けやすくなったという見方も出来ますが、就労証明さえ持ってくれば預けられる、という状況にもなり、子育てが楽になったという一方、子供に対して親がきちんと育てる、という責任を放棄しやすくなるという現実も含んでいる訳です。

私たちが思うのは、認可保育園は本当に保育を必要としている親のニーズに対応したサービスを提供しているのか、という点です。現実として当社のお客様を見てみると、働く女性の多くはサービス業であったり、接客業であったり、あるいは、女医の方、管理職の女性など、そのほとんどの方にとっては「9to5」の仕事ではない人ばかりで、保育時間一つを取ってみても、認可保育園の開所時間では働く事ができない。その点だけでも、認可保育園の定員枠を広げたところで、この開所時間で十分な人ばかりが認可保育園の恩恵、つまり、税金の恩恵を受け、それ以外の人たちは、全くその恩恵を受けることはできないのです。国は、待機児童対策、児童福祉という大義のもと、税金を「認可保育『園』」に流しているのであって、「本当に保育を必要としている『人』」へ向けられているのではないことが問題だと思います。サービス内容としても、国民(保育を必要としている)は、ファミリーカーを要求しているのに、国は、軽トラックを支給しているようなもので、利用者が求めている内容と国が提供している内容が異なっているのです。結果的に格安で軽トラックを貰えるなら貰っておこうとなるのでしょうが、国民は、開所時間の長い保育園、又、日曜や祝日も開所している保育園、あるいは、ゼロ歳児、それも復職に耐える期間から預かってもらえる保育園を要望しているのです。国も自治体も乳児保育を充実させる対策を図ってはいますが、もともと我々民間保育事業者にとっての「乳児」の概念とは異なり、認可保育園では6ヶ月児保育はまだまだ少なく、東京都でさえも、6ヶ月以上対象の認可保育園が全体の約半数、1歳以上対象の園が未だに30%を占めており、乳児保育対策としても現実の需要とは異なるのです。

私たち認可外保育園は、認可外というだけで認可より劣ると安直に言われてしまいがちです。当然ながら、良くない認可外保育園もあるのが現実ですが、この問題は、どの分野も同じでしょう。認可も認可外も、測る尺度によってはいいものと悪いものがあり、一般の業種も同じであり、その判断は、利用者の皆さんにしていただくのが一番だと思います。
 このように考えると、児童福祉に関わる補助金は、例えばこれまでも議論されてきた「バウチャー制度」など、利用者に直接支給され、且つ、利用者が自らの意思でサービスを選べる環境作りこそが最も有効な制度だと考えます。決して、認可保育園のみならず、認可外保育園も含めて、施設に補助が支給されるのではなく、利用者に直接還元される仕組みこそが正しいサービスを作り上げる環境整備の基本だと考えます。今の政策では、児童福祉の予算によって、確実に保育士の雇用創出には繋がりますが、本当の意味での子育て支援、就労者支援とは乖離があるように思います。

「公」が善、「民」が悪でもなく、又、逆でもなく、政治も行政も企業経営も、全て、それを行う人の倫理観によるもので、それを行う人間が正しいかどうか、リーダーが正義であるかどうかによって、結果は全て異なります。当社のスタッフは、本当に子供たちのためにたくさんのいい経験をさせるにはどうするかを真剣に考え、お客様の役に立とう、という思いで取り組んでくれているスタッフがたくさんいると自負しています。認可保育園以上の時間まできちんと預かり、認可保育園で預かれない年令児を預かり、又、認可保育園に負けない保育内容にしようと懸命に取り組んでいます。認可外保育園というだけでの偏見は持って頂きたくないというお願いとともに、現状の認可保育園定員数拡大策が単純に待機児童対策になるのでもなく、少子化対策になるのでもなく、働くお母さん、お父さんのニーズに必ずしも合致していない面があるということを今一度考えていただきたいと思っております。

違ったご意見もあると想像しますが、文面が限られており、なかなか全体を捉えた内容を書く事もできず、十分にお伝えする事ができない危惧もあります。少なくとも、全社の思いとして、子供には本当に健全に育ってもらえる環境づくりを目指し、利用者の皆様には高いご評価を得られることを望み、そして、日本全体に働きやすい環境と、子育てを楽しめる環境を作って行ける事を願って事業を進めて行きたいと思っておりますので、何卒今後ともご支援をお願い申し上げます。

ページトップへ

サービス・企業情報
法人向け保育施設・子育て支援企画
個人向け総合子育てサービス
認可保育・企業内保育
グループ採用情報
ブログ
ラビットママのひとりごと